SFAとCRMは、どちらもさまざまな顧客情報を持つシステムです。このため、両システムはよく比較されがちです。なかには「SFAとCRM、どちらが良い?」などという議論もあるようです。しかし、本来SFAとCRMは別ものであり、それぞれ適した用途があります。そのためシステムも適材適所という言葉に従い、貴社の目的に合うものを導入する必要があります。
今回はSFAとCRMそれぞれの特徴と違いについて解説します。貴社が適切なシステムを導入するための参考としてください。
SFAとCRMは、本来別もの
冒頭でも解説した通り、本来SFAとCRMは別々のシステムです。従ってシステムごとの違いを理解する上で、SFAとCRMそれぞれの特徴を知っておくことは重要です。
まずはそれぞれのシステムについて、主な特徴を解説します。
SFAの特徴
SFAは、一般的に営業支援システムと呼ばれています。SFAは紙ベースで記入する営業日報を電子化することにより、筆記用具を用いて手書きする手間が省ける特徴があります。特にクラウドベースのSFAなら外出先からでも入力できますから、帰社する手間と時間も省けます。しかしSFAのメリットは、これにとどまりません。
SFAは以下に代表される機能を備えています。これらは営業事務に関する作業を省力化・自動化する機能であり、できるだけ多くの時間を営業活動に割くための力強い味方になります。
- 顧客に関する必要な情報を入力することで、報告書や帳票を自動的に作成する
- 何度も同じ情報を入力する手間が省ける
- 売上予測レポートや重点的に対応すべき商談など、案件管理に必要な情報も簡単にアウトプットできる
- 請求先など必要な情報を入力すると、請求書を自動発行する
CRMの特徴
CRMは顧客関係管理と呼ばれているシステムであり、主に以下の機能が搭載されています。
- 顧客の購買記録
- 顧客からの問い合わせ情報
- キャンペーン情報の送信記録や送信履歴
このようにCRMは、企業と顧客とのやりとりで発生した情報を集めるシステムです。従って、営業担当者の事務を軽減する機能が搭載されていないものもあります。
SFAとCRMの相違点は大きく5つ
SFAとCRMという両システムを取り上げる上で、双方の相違点は大きく5つに分けられます。ここではそれぞれのポイントごとに、相違点の内容を詳しく解説します。
そもそも利用目的が異なる
SFAとCRMでは、そもそもシステムの利用目的が異なる点に留意が必要です。それぞれの目的は、以下の通りです。
- SFAの目的は営業活動の効率化とより良い案件の受注による、営業部門の売上と利益の増大
- CRMの目的は顧客満足の向上と優良顧客の育成による、LTV(顧客生涯価値)の最大化
SFAの場合は、利用するメリットが営業活動に関わるものに限定されます。従ってSFAをどのように活用しようとも「営業活動による売上と利益を増やす」という観点は変わりません。この点でSFAは、営業活動の戦術を決めるシステムといえるでしょう。
一方でCRMはカスタマサービス部門が主に活用するものの、これにとどまりません。たとえばCRMは、製品の開発や製造計画を策定する上で重要な情報を与えます。また経営計画など、企業の戦略に関わる部分にも大きな影響を与えうることも特徴です。
従ってCRMの活用結果は、以下にあげる部門にも影響を与えます。
- 営業部門
- マーケティング部門
- 製品やサービスの製造・開発部門
- 経営層
上記に示す通り、CRMを利用するメリットは全社にわたることが特徴です。
SFAとCRMでは、利用される場面やタイミングも異なる
SFAとCRMでは、利用される場面やタイミングにも違いがあります。SFAは営業活動に関した使われ方がされますから、問い合わせから受注、請求書発行までのフェーズで使われるものの、その後のフェーズでは関与しません。
一方でCRMは商談の段階で活用できる機能もありますが、むしろ製品やサービスの利用が始まってからが本番です。顧客が利用を終了するまで、CRMの役割は終わりません。またリピートオーダーがある顧客の場合は半永久的に関係が続きますから、CRMもずっと活用されます。
必要とする顧客情報の項目も異なる
SFAとCRMでは機能や利用目的が異なるため、必要とする顧客情報の項目も異なります。SFAでは、以下に代表される項目が収集されます。
- 案件や商談の内容
- 訪問や折衝など、商談への対応履歴
- 受注の可能性や、受注が見込める時期
一方、CRMで収集される項目は以下のものが代表的です。
- 問い合わせ内容や対応履歴の管理
- 過去の購入履歴やサービスの利用実績
- キャンペーン情報の配信履歴や参加履歴
このように収集する項目も大きく異なりますから、SFAとCRMは使い分けが重要です。
・利用者や利用する部門にも違いがある
SFAとCRMでは、利用者や利用する部門にも違いがあります。SFAの利用目的は営業活動の効率化が主眼となりますから、使う方も営業部門に所属する方となります。
これに対して、CRMを活用する方の所属先は多岐にわたります。もちろんカスタマサービスを担当する部門が主に利用することは確かですが、それ以外にも以下にあげる幅広い部門で活用されます。
- 営業部門や販促部門
- 現業部門
- 経営層
このようにSFAは営業部門で完結できる一方、CRMは多くの部門で活用される点に留意が必要です。
SFAは経費の節減も主な目的だが、CRMはそうではない
SFAとCRMは、経費の節減に関する観点でも対照的です。SFAの場合は以下のように、営業活動の効率化も主な目的の1つにあげられます。
- 営業職員が自ら営業情報を入力することによる、営業事務担当者の削減
- 帰社せずにどこでも営業実績を入力できることによる、稼働時間の削減
- ペーパーレス化による紙の削減
一方でCRMにおいても、活用において経費の節減は意識されます。しかしCRMはそれ以上に、企業価値の増大と顧客満足の向上、およびLTVの最大化が目的です。このようにCRMは将来の利益を増やす目的で使われることが主体となるため、経費の節減は主な目的となりません。
SFAとCRMの違いを生かすことで、システムをより効果的に活用できる
ここまで解説した通り、SFAとCRMは異なるシステムです。一方で従ってSFAとCRMの違いを生かすことで、システムをより効果的に活用できます。
・SFAとCRMは、連携して使うことがおすすめ
SFAとCRMはどちらか一方を選ぶというものではなく、相互に連携するとより効果的です。例えばSFAでは商談の際に、顧客から受けた要望が入力されます。この情報をCRMで活用することによりシームレスな連携ができ、充実したサポートと貴社の信用につながります。一例として、「営業に話をしたのに、サポート部門には何も伝わっていない」といったクレームを減らせる点があげられます。
一方で顧客からのクレームは、担当した営業マンにも入る場合があります。この場合もCRMを活用してサポート部門に入った情報を確認できますから、営業担当者が顧客の不満を知らなかったという事態を防げます。また顧客からのリピートオーダーを受ける際にも、CRMの参照によりスムーズな商談につなげることができます。
・社内システムとの連携も考慮が必要
SFAやCRMを活用する際には、社内システムとの連携にも考慮が必要です。一例として、以下のシステムが挙げられます。
- メールシステム
- 会計システム
- 勤怠・給与システム
上記のシステムと連携できれば、二重入力や入力ミスなどを防ぐことができ、業務の効率化に大きく役立ちます。
スタートアップ企業や新規事業なら、まずはSFAから導入を
ここまで解説した通り、多くの企業ではベースとなる売り上げを確保するためにも、SFAとCRM両方の導入が望ましいことは確かです。しかし、これには例外があります。
御社がスタートアップ企業の場合や、新規事業を立ち上げたばかりの場合、製品やサービスを継続して利用している顧客はほとんどない状態のはずです。この状態でCRMを導入しても、管理する顧客がいないため投資効果はあまりありません。
むしろ上記にあげる企業では、どんどん受注を増やす活動に注力すべきといえます。まずはSFAの導入を優先することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?この記事をご覧いただいた皆さまは、SFAとCRMには多くの違いがあることがおわかりいただけたと思います。
システムを導入する目的は、各社それぞれで違いがあります。御社の目的やゴールをはっきり定めた上で、必要な機能を持つシステムを選ぶことが重要です。またSFA、CRMともに使い勝手も業務の効率に大きく影響しますから、導入を検討する際には入念なチェックをおすすめします。加えてサポート体制が充実しているシステムを選ぶと、疑問点も速やかに解決でき、「せっかく導入したのにあまり使われない」といった事態を防げます。
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