製造業

部品メーカーにSalesforceがはまらない理由について解説します

1.部品メーカーのビジネス構造

長期的かつ複雑なサプライチェーン

部品メーカーのビジネスは完成品メーカー(OEM)や他の部品メーカーなど、複数の企業との長期的な取引関係に支えられています。多くの場合、サプライチェーンは複雑かつ多層構造で、Tier 1、Tier 2、時にはTier 3まで存在します。各層での要求や納期管理が発生し、しかもそれらは頻繁に変動するため、高度なプロジェクト管理が求められます。

長期契約と数量予測

製品サイクルが長く、数年~十数年にわたる長期契約が結ばれることも珍しくありません。また、新製品の開発サイクルが長いため、試作品から量産開始までの期間で売上を確保するために、長期的な数量予測や顧客との折衝が必要になります。

2.部品メーカーの営業活動について

大口顧客への提案営業

部品メーカーの営業は、ひとつの大口顧客がビジネス全体を大きく左右することがよくあります。そのため、重点顧客への継続的な提案や深耕営業が必要です。営業担当者は技術者や購買担当者と密な関係を構築し、次世代製品への採用を狙ったり、コストダウン要求や品質改善要求などに迅速に対応したりすることが重要です。

問い合わせ形の受注ではなく協業的アプローチ

一般的なBtoBビジネスにおける問い合わせ→商談→受注というプロセスだけではなく、開発段階から技術・品質要件の調整が進む「協業的アプローチ」が求められます。よって、営業の役割は単なる商談管理だけにとどまらず、製品開発の初期段階からのプロセス管理が不可欠となります。

3.試作品プロジェクトの管理と将来売上

試作品の成功が将来の大量受注に直結

部品メーカーでは、試作品(プロトタイプ)の提案・評価が極めて重要です。試作品が評価され、量産製品への採用が決定すれば長期的な大量受注につながる一方、試作品段階での不具合や調整不足が後々の量産契約に大きく影響します。このため、プロジェクト管理システムは試作品の要求仕様・評価結果・変更履歴を詳細に管理する必要があります。

将来売上を見据えた計画管理

試作品プロジェクトには、量産開始までに数か月から数年単位の時間がかかります。案件ごとの期待収益が大きいため、単年度の商談管理だけでなく、数年先までの見込み売上を試作品ベースで管理・把握する仕組みが求められます。ここがSFA(Sales Force Automation)系システムの一般的なパイプライン管理とは異なる大きなポイントです。

4.営業サイドと技術サイドのコミュニケーション管理

技術サイドとの密な連携

部品メーカーでは、顧客の求める仕様や課題に合わせて技術サイドが製品の提案を行うケースが多々あります。営業担当者と技術者の連携がスムーズでなければ、量産検討や不具合対応が遅れるリスクが高まります。

変更履歴と情報共有

試作品段階から仕様や図面が何度も更新されることは日常茶飯事です。営業サイド・技術サイド・品質保証サイドなど、関連部門がバラバラに管理していると、変更履歴の整合性が取れず混乱を招きます。開発進捗や顧客要求を一元的に管理し、リアルタイムで情報を共有できるしくみが必要です。

5.どのようなシステムで管理すべきか?

Salesforceがはまらない理由

SalesforceをはじめとするSFA/CRMシステムは、主に「商談」「パイプライン」「顧客情報」などの管理が主眼に置かれています。しかし、部品メーカーのように試作品プロジェクトから量産体制確立までのプロセスが複雑で長期にわたる業態では、一般的なCRM機能だけでは管理しきれない情報やプロジェクト管理要素が多く存在します。

  • 試作ごとのコスト・仕様変更管理
  • 技術サイドとの設計仕様連携
  • 長期的な数量予測・コスト管理
    こうした内容がSalesforceだけではカバーしきれず、カスタマイズを大幅に加えないと対応が難しいケースが多いのです。

専門システム or 基幹システム連携

部品メーカーにおいては、ERPやPLM(Product Lifecycle Management)などの基幹システムと、営業活動をサポートするSFA/CRMがシームレスに連携することが望まれます。また、試作品・量産を含むプロジェクト管理に特化した専用システムを導入し、顧客情報や売上予測を含む情報を一元管理できる形が理想的です。

6.顧客中心のトランザクション管理

顧客単位の「商談管理」では足りない

部品メーカーにおける顧客中心の管理は、単に商談のステージを追うだけでなく、試作品の評価結果や設計変更の度合い、品質基準の合意など、非常に詳細なトランザクション履歴を含みます。顧客が複数のプロジェクトを同時並行で動かすことも多いため、案件単位だけでなく、顧客単位でプロジェクトを俯瞰できる仕組みが必要です。

トランザクション履歴の蓄積と活用

たとえば、

  • 過去の試作品の評価内容
  • 不具合やクレーム対応履歴
  • コストダウン交渉の履歴と結果
  • 既存製品の改良計画
    などを体系立てて蓄積し、将来の提案に活かす必要があります。これらをプロジェクト管理ツールやPLM、ERPと連携しながら一元的に管理することで、営業・技術・品質保証などの部門がスムーズに連携できるようになります。

7.まとめ

部品メーカーの営業活動は、いわゆる一般的なSFA/CRMが想定する「問い合わせ→商談→受注」というシンプルなプロセスではなく、「試作品提案→評価・改良→量産プロジェクト立ち上げ→アフターサービス」という複雑かつ長期的な流れが中心です。営業サイドと技術サイドの情報共有や変更履歴管理、長期的な売上予測やコスト管理が必要なため、標準機能の範囲でSalesforceなどのクラウドCRMを導入しても十分にカバーできないケースが少なくありません。

では、どのようなシステムを導入すべきか?

  • 顧客・案件管理だけでなく、試作品プロセスの詳細情報と数量予測を管理できる
  • 変更履歴や仕様管理を、プロジェクト単位と顧客単位の両方で把握できる
  • SFA/CRMとPLM、ERPなどの基幹システムを連携させ、部門間で共通の情報を共有できる

こうした仕組みを整えることが、部品メーカーの営業効率化と競争力強化につながります。ROITでは、部品メーカーが抱える課題を整理し、最適なプロセス設計とシステム連携を支援いたします。もしご興味があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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