1. ERPとは?
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の基幹業務を一元管理するためのシステムです。財務、在庫管理、人事、生産管理など、あらゆる業務を統合し、効率化と透明性の向上を図ります。しかし、この「効率化を実現するためのツール」が、実際には「企業全体を混乱に陥れる厄介者」として扱われてきた事例が後を絶ちません。
日本企業のERP導入プロジェクトは、なぜここまで難しいのでしょうか?そして、なぜ失敗が繰り返されるのでしょうか?この記事ではその根本原因を追求し、未来への道筋を示します。まず一つ、今すぐ言いたいことがあります
――あなたのERPプロジェクト、本当に正しい方向に進んでいますか?
2. 2000年代からはじまった日本のERP導入がほぼ失敗した理由
(1) 標準化を嫌う日本企業の体質
2000年代、日本の多くの企業がERPに手を出しました。しかしその多くが失敗に終わったのは、「標準化」への抵抗感です。多くの日本企業は、「うちの業務は特別だから」と言いながら独自プロセスを守り抜こうとしました。その結果、せっかくのERPを徹底的にカスタマイズ。結果はどうでしょう?メンテナンス性が失われ、巨額の保守費用が発生する負のループに突入しました。
(2) 曖昧な要件定義の放置
「要件定義が大事」と言われて久しいですが、日本企業のERP導入プロジェクトでは、曖昧な要件定義が当たり前でした。なぜなら、目に見えないプログラムという成果物を作るのに、ドキュメント中心の要件定義だからです。営業部、経理部、IT部門それぞれの言い分を聞いた結果、すべてを詰め込もうとする無計画な導入が頻発。これでは失敗して当然です。
(3) 経営層の無責任なスタンス
ERP導入は経営改革の一環であるにもかかわらず、多くの経営層は「IT部門に任せる」と責任を押し付けました。トップのコミットメントがないプロジェクトに成功などあるはずがありません。ERPを何の目的で導入するか信念をもって取り組んだ経営者が当時どれだけいたでしょうか?海外や他の企業もやってて、導入しないで株価に影響したら自分のせいになるしぐらいのノリでERP導入に踏み切ったのではないでしょうか?
3. ウォーターフォール、オンプレミス、カスタマイズによるデスマーチ
(1) 時代遅れのウォーターフォール型プロジェクト
ウォーターフォール型で進められるERP導入プロジェクトでは、要件定義で失敗するとその後のすべての工程が崩壊します。しかし、それでもなお多くの企業はこの手法を採用しています。なぜか?「過去に成功例があるから」。だが、その「過去」はもはや現代のニーズに適応していないのです。また、ウォーターフォールはベンダー側がリスクをとりたくなく、フェーズごとにお金をもらうことを目的に考えられた導入手法です。そこに顧客のために最高のシステムを導入したいというイケてる思想は一切ありません。
(2) オンプレミス依存の末路
オンプレミス型ERPにしがみついている企業が未だに多い現実。これでは高額な設備投資と、アップデートのたびに巨大なコストがかかるだけです。それでも「クラウドは不安」と言い張るのであれば、時代に取り残される覚悟を決めるべきでしょう。ちなみに、「うちもクラウドにしているよ?」とどや顔で言っている人がいますが、聞いてみるとERPではほとんどがIaaSのクラウドを利用しています。それは私に言わせるとほぼオンプレミスです。クラウドERPとは似て非なるものです。
(3) カスタマイズ地獄
「自社の業務にぴったり合わせる」という名目でERPをカスタマイズしすぎた結果、システムが使い物にならなくなったケースをいくつ見てきたことでしょうか?これこそ、ERP導入失敗の最たる要因です。なぜカスタマイズ地獄がおきるかというと、ERP導入の真の目的を理解していない現場のわがままを聞いた経営者の怠慢とベンダーがカスタマイズしたほうが儲かるからです。大きくこの2つの要素によって日本のERPはカスタマイズのオバケと化した艦隊のようなシステムになっています。カスタマイズが入れば入るほどコストは膨大になりますし、他のベンダーでは手出しができない代物になってしまうのです。この商法でコンサル会社、SIerは莫大な利益をあげました。
4. アジャイル、クラウド、ローコード、AIの技術革新によるERP導入の変化
(1) アジャイルでスピード重視の導入
ウォーターフォールがもはや通用しない時代、世界ではアジャイル開発がERP導入の主流になりつつあります。小さく始めて、成果を見ながら進めるアジャイルは、変化が激しい現代において必須の手法です。
(2) クラウドがもたらす柔軟性
オンプレミスに固執する企業は、クラウドがもたらす「スピード」と「コスト削減」の恩恵を見逃しています。Microsoft Dynamics 365などのクラウド型ERPは、拡張性とメンテナンス性で圧倒的な優位性を誇ります。ここで言っているクラウドはあくまでSaaSです。例えば、ERP環境構築もオンプレミスだと方式エンジニア側と色々と調整が必要ですが、クラウドERPであればボタン一つで環境構築が可能です。
(3) ローコードで現場が自ら改善
IT部門に頼りきりだった時代は終わりました。ローコードプラットフォームの登場により、現場の従業員が自らERPを改善・活用できる時代が到来しています。ちょっとした項目の追加にベンダーに300万円払うのはやめましょう。変更したいと思ったタイミングで自分たちの判断で項目を追加して帳票にも出力できるようにする。これこそローコードの考え方です。
(4) AIが示す未来のERP
AI統合型のERPは、データ分析や業務自動化を可能にし、単なる管理ツールではなく、未来を見据えた意思決定を支援する存在となっています。Microsoft Dynamics 365などは、AIを標準搭載したERPになります。CRMもERPもAIの進化のメリットを享受するためには標準導入がマストです。AIの機能の搭載は標準機能を利用していることを前提にして行われます。カスタマイズしている機能にはAIは搭載されません。自分たちで作るしかありません。このAI利用の鉄則を理解して経営者はERP導入に挑むべきです。
5. ベンダー側もユーザー側も意識と導入プロセスを再考すべき
(1) ユーザー企業への警鐘
「従来のやり方を続ければ問題ない」と考える企業は、確実に未来の競争から脱落します。DX時代に求められるのは、従来の考え方を捨て、新たなアプローチを積極的に採用する覚悟です。
(2) ベンダーへの厳しい指摘
画一的な提案や過剰なカスタマイズを推奨するベンダーにも問題があります。要件が膨らむことについてユーザーの責任にして、膨らんだ要件をスクラッチで開発するのをやめましょう。本来、ERPは企業を進化させるためのツールであり、顧客企業を泥沼に陥れるべきものではありません。
6. 要件定義の前にPOCが重要工程な理由
POC(Proof of Concept:概念実証)は、ERP導入のリスクを軽減するための必須工程です。これを省略することは、失敗を許容することに等しいと言えます。昔はCRPという工程が要件定義でありましたが、この工程をさらにアジャイル・クラウド・AI時代に合わせて最適化します。
(1) 成果を可視化
POCを通じて、ERP導入が実際に効果をもたらすかどうかを確認できます。これにより、導入後のトラブルを未然に防ぎます。
(2) 現場と経営の合意形成
POCの結果を基に、現場と経営層の認識を一致させることができます。これにより、導入プロジェクトがスムーズに進行します。
(3) 技術リスクの洗い出し
POCで実際の環境を小さく構築して、外部IFもあわせてプロタイプを爆速で構築することで、どのような技術課題があるかを早期にあらいだします。ウォーターフォールだと詳細設計の後工程ぐらいで環境構築がはじまるのですが、そこで技術課題がわかっても遅すぎます。
7. まとめ
日本のERP導入は、これまで多くの失敗を重ねてきました。しかし、技術革新とプロセスの見直しを通じて、その失敗の連鎖から抜け出すことが可能です。
ROITは、次世代型のERP導入を支援するリーディングカンパニーとして、日本企業のDXを後押しします。時代遅れのやり方にしがみつくことは、リスクでしかありません。未来を切り拓く準備ができた企業の皆様、ROITとともに次のステージへ進みませんか?
技術革新によって変革の先頭に立つ覚悟がある企業だけが、生き残る時代が到来しています。
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