IT化の進展により、これまでは難しかった「顧客にあわせたサービスの提供」を行うことが可能となりました。これを実現するためには、規模の大小を問わずCRM(顧客関係管理)が欠かせません。しかし中堅・中小企業では費用に限りがあるため、CRMシステムの導入は遅れがちです。
クラウドCRMは費用や手間をかけず、短期間で顧客情報管理を実践できることが魅力です。今回はクラウドCRMがなぜ中堅・中小企業に向いているのか、その理由を解説していきます。
クラウドCRMとは何か?
CRMは顧客情報を収集することから、情報システムの1つと捉えられがちです。しかし企業業績に大きな影響を与えることから、経営戦略のひとつとして扱われるべきものです。
ここではCRMのポイントと、クラウドCRMについて解説します。
CRMは単なる顧客情報の収集ではなく、重要な経営戦略
CRMは顧客の年齢や性別、購入記録などを集めるだけの仕組みではありません。収集した情報の分析を行い、顧客満足度と企業業績を向上する仕組みを作ることであり、また重要な目的です。
株式会社スマートウィル社長・坂本雅志氏は、CRMを以下のように定義しています。
=====引用はじめ=====
顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の両方を高めるための経営における選択と集中の仕組み
(坂本雅志著 この1冊ですべてわかるCRMの基本 日本実業出版社 2014,p16)
=====引用おわり=====
従ってCRMは単なる顧客の情報収集や、ITシステムにとどまるものではありません。収集した顧客情報を活用して顧客満足と利益の極大化を目指す、重要な経営戦略のひとつです。
クラウドCRMの特徴
クラウドCRMとは、CRMに関する情報を外部の事業者が運用するサーバーで管理するものです。クラウドCRMに格納されたデータの利用は、インターネットに接続して行うことが特徴です。
クラウドCRMは定期的な利用料の支払いは発生するものの、サーバーなどハードウェアに対する費用負担が発生しません。保守管理もクラウドサービス事業者の責任で行われますから、安定かつ最新の製品が利用できるメリットがあります。またインターネット接続ができれば、外出先からでもすぐに情報確認ができる点もメリットです。
クラウドCRMが中堅・中小企業に向いている理由
クラウドCRMは、特に中堅・中小企業に対して向いているシステムです。その理由は、以下の通りとなります。
費用や手間をかけずに、顧客満足度の向上や業績アップにつなげられる
自社でCRMシステムに必要な機器を用意する場合、初期費用が多額となります。サーバー本体の購入費用だけで100万円以上かかる場合もある上に、CRMシステムの使用に必要なライセンスを一括で購入しなければなりません。またCRMシステムの費用は、サーバー本体より高額となることも多いです。
一方でクラウドCRMは利用した期間だけ費用を支払うため、初期費用が低額となります。また導入する際にインストールなどの手間が少ないことも特徴です。このため資金の少ない中堅・中小企業でも早期にCRMシステムを活用でき、顧客満足度の向上や業績アップにつなげることができます。また競合他社より優位に立つ対策を取ることも可能です。
システムをメンテナンスする手間や要員が不要
中堅・中小企業においては、専任のIT技術者を置いていない場合も少なくありません。もし自社でサーバーを用意した場合は、定期的なバージョンアップやトラブル時の復旧作業も自社で行う必要があります。これらの作業はITベンダーに外注することもできますが、保守契約などの費用が別途必要となります。
一方でクラウドCRMを利用すると、システムのメンテナンスやバージョンアップ作業、トラブル時の対応といった作業はクラウドCRM事業者で行いますので、安心かつ確実です。このため、利用企業は顧客情報の分析や活用といった業務にリソースを集中させることができますから、従業員が限られる中堅・中小企業において強い味方となります。
情報の一元管理ができる
CRMシステムでは、情報の一元管理も重要です。せっかく収集した顧客情報でも各店舗や事業所ごとに管理していたのでは、企業の業績向上に貢献している優良顧客を見逃すことにつながります。例えばA店ではVIPサービスを受けられるのに、B店では一般顧客と同様の扱いしか受けられないようでは、顧客の不満につながりかねません。
クラウドCRMはインターネットにつながっていれば、OSに関わらずどこからでも利用できることがメリットです。従業員がいつでもどこでも使いやすくすることで顧客情報の分散を防ぎ、情報の一元管理を行うことが可能となります。またこれにより全社で統一した対応が可能となり、顧客満足度の向上や業績アップにもつながります。
意思決定のスピードアップに貢献する
CRMシステムを導入すると、顧客に関する多種多様なデータを1つのシステムに集めることができ、さまざまな観点から顧客情報の分析を行えるようになります。これにより組織は迅速に意思決定を行い、顧客のニーズと業績アップを両立できる施策を行うことが可能となります。
クラウドCRMを導入する方法
クラウドCRMの導入自体は、自社でサーバーを用意する方法よりも簡単です。以下のどちらかの方法を取った後、初期設定を行うことで運用を開始できます。
- クラウドCRM事業者が指定するWebサイトに、指定されたIDとパスワードでログインする
- クラウドCRM事業者のWebサイトからプログラムをダウンロード・インストールする
むしろクラウドCRMの導入には、事前の検討が大切です。利用する製品を決める前に、以下の項目について十分に検討することが重要です。
- 企業におけるCRMの戦略
- CRMで必要とする機能
- 対象とする顧客数、及び収集する情報の項目
- 初期費用やランニングコスト
- クラウドCRM事業者の実績、およびデータ保護の体制など(機密情報を扱うため)
- 他システムとの連携
Dynamics365 CRMを導入するメリット
クラウドCRMを検討中の中堅・中小企業において、Dynamics365 CRMはさまざまなメリットがある製品です。どのようなメリットがあるか、解説していきます。
Microsoft製品であるため、利用しやすい
Dynamics365 CRMは、Microsoft社が提供するクラウドCRMです。
多くの企業では、WordやExcel、PowerPointといったMicrosoft Office製品を利用していると思います。Dynamics 365はOffice製品とインターフェイスが似ているため、多くの方にとっては使いやすいことが特徴です。
またDynamics365 CRMは、Officeとの連携も十分です。たとえば「Excel Template」機能を使うことで、Dynamics365にデータを投入すると自動的に必要な書類も作成できます。別途貼りつけや修正などの手間が不要なため、事務作業の時間も大幅に短縮されます。
組織に応じたカスタマイズが可能
Dynamics365 CRMは、各社の事情に応じたカスタマイズが可能です。例えば画面上のレイアウトや項目の追加、ビジネスロジックの実装などがあげられます。
標準的なカスタマイズは、プログラミングを行わずに実施可能なこともメリットです。このため、ITに詳しい人材がいない企業でも問題はありません。
導入実績は国内2位
Dynamics365 CRMは、国内で2位の導入実績を持っています。
2017年10月4日、ノークリサーチは「2017年の国内中堅・中小市場におけるCRMの導入社数シェアおよび現状の課題に関する調査」結果を公表しました。この結果によると、年商500億円未満の中堅・中小企業において、Dynamics365 CRMのシェアは22.5%です。これはSalesforce社に次いで2位となっています。
多くの企業が利用していることは、中堅・中小企業のニーズに沿ったシステムであることを意味します。このため、Dynamics365 CRMは中堅・中小企業に向いているシステムといえるでしょう。
まとめ
クラウドCRMは低コストで導入・運用できること、また専任のIT技術者を社内に持つ必要がない特徴を持っています。これは中堅・中小企業にとって大きなメリットです。
CRMは単なるIT化にとどまらず、経営戦略を実行に移す道具の1つです。クラウドCRMの導入自体は簡単ですが、事業を成功に導くためには目的をしっかり決めた上で、事業に合った製品を選定することが必要です。普段からMicrosoft製品でデータ管理などを行っている企業様には、多くの企業で実績のあるDynamics365 CRMの利用がおすすめです。
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