コラム

会計処理の概要を理解し業務を円滑に_「ファイナンスリース」とは

投稿日:2024/7/8
投稿者:細谷

会計処理は、企業や組織が日々の経済活動を整理し、財務情報を的確に記録するための不可欠なプロセスです。

今回のテーマは、リース契約のうちの一つである「ファイナンスリース」です。
企業が成長を続けるためには、最新の設備や技術を迅速に導入することが不可欠です。
しかし、高額な資産を一括で購入することは、多くの企業にとって大きな財務負担となります。
そこで「ファイナンスリース」が有効となります。このブログでは、ファイナンスリースと会計処理の概要を述べていきます。

ファイナンスリースとは

「ファイナンスリース(Finance Lease)」は、リース契約の一形態であり、通常、企業が設備や機械などの高額な資産を購入する代わりに、それらをリースする契約です。
「ファイナンスリース」では、リース契約期間が終了すると、リース資産の所有権がリース利用者(借手)に移転するか、もしくは非常に安価な価格で購入できるオプションが提供されることが一般的です。

  • ファイナンスリースの特徴

長期間のリース契約
「ファイナンスリース」は通常、リース資産の経済的耐用年数に近い長期間のリース契約となります。

  • 資産の所有権移転

リース期間終了後に資産の所有権が借手に移転するか、低価格で購入するオプションがあります。

  • 支払総額

リース期間中の総支払額は、資産の取得コストとほぼ同等かそれ以上になることが多くなります。

  • 経済的リスクと便益の移転

経済的リスクと便益が実質的に借手に移転します。
借手は資産を使用することによる利益を享受しますが、同時にメンテナンスや修理などのコストも負担します。

  • バランスシート計上

「ファイナンスリース」は、借手のバランスシートにリース資産とリース債務として計上されます。
これは、リースが実質的には購入とみなされるためです。

  • 税務上の取り扱い

税務上、「ファイナンスリース」は通常の資産購入と同様に扱われ、減価償却や利息支払いとして計上されることがあります。

「ファイナンスリース」は、企業が資産を購入するための資金を調達する手段として利用されることが多く、資金繰りの改善やキャッシュフローの管理に役立ちます。
また、企業が新技術や新しい設備を導入する際のリスクを軽減する手段としても有効です。

ファイナンスリースの重要性

前述の通り、「ファイナンスリース」は企業が資金調達の柔軟性を高め、キャッシュフローを安定させ、最新技術を導入しやすくするための重要な手段です。
また、財務健全性の向上、リスク管理の強化、税務上の利点、経営の柔軟性など、多くのメリットを提供します。
これらの理由から、「ファイナンスリース」は現代のビジネス環境において不可欠なツールとなっています。
以下に具体的な内容を記載します。

  1. 資金調達の柔軟性

「ファイナンスリース」は、企業が高額な設備や機械を購入するための大規模な資本を一度に用意する必要がないため、資金調達の柔軟性を提供します。
これにより、企業は必要な設備を迅速に導入し、競争力を維持することができます。

  1. キャッシュフローの安定化

「ファイナンスリース」では、リース期間中に均等なリース料を支払うため、企業のキャッシュフローが安定します。
これにより、資金繰りの計画が立てやすくなり、経済的な不確実性に対処しやすくなります。

  1. 最新技術の導入

企業は、最新の技術や設備を導入することで、生産効率の向上やサービスの質の改善を図ることができます。
「ファイナンスリース」を利用することで、高額な初期投資を避けつつ、最新の技術を迅速に取り入れることが可能です。

  1. 財務健全性の向上

「ファイナンスリース」を利用することで、企業はバランスシートにリース資産とリース債務を計上し、財務状況を正確に反映させることができます。
これにより、投資家や債権者に対して透明性を提供し、信頼性を高めることができます。

  1. リスク管理

「ファイナンスリース」は、資産の所有に伴うリスク(例:陳腐化や価値の減少)を軽減する手段となります。
リース期間終了後に新たなリース契約を結ぶことで、常に最新の設備を使用することができ、技術革新への対応力が高まります。

  1. 税務上の利点

多くの国では、「ファイナンスリース」に対し、税務上の優遇措置が存在します。
リース料の一部が税務上の費用として認められることで、税負担の軽減が図れる場合があります。

  1. 経営の柔軟性

「ファイナンスリース」は、経営戦略において柔軟性を提供します。
例えば、需要の変動に応じてリース契約を調整することが可能であり、経済環境の変化に迅速に対応することができます。

ファイナンスリースの活用例

「ファイナンスリース」は、企業が高額な資産を購入せずに利用できるため、さまざまな状況で活用されています。
以下に、「ファイナンスリース」の具体的な活用例をいくつか挙げます。

  1. 製造業における機械設備の導入

製造業では、生産ラインの機械や設備の更新が頻繁に必要です。「ファイナンスリース」を利用することで、企業は最新の設備を導入し、生産効率を高めることができます。
リース期間終了後に機械の所有権を取得するか、新たな設備にリース契約を切り替える選択が可能です。

  • 自動車メーカーが新しいロボットアームやCNC機械を導入するために「ファイナンスリース」を利用する。
  • 食品加工業者が最新の包装機械をリースで導入し、製品の品質向上を図る。
  1. 物流業における車両の調達

物流業界では、トラックや配送車両の維持と更新が重要です。
「ファイナンスリース」を利用することで、大規模な資金投入を避けながら、新しい車両を迅速に導入できます。

  • 配送業者が新型トラックをリースし、燃費効率を改善して運営コストを削減する。
  • 小売業者が配送用バンをリースし、オンライン注文の配達能力を強化する。
  1. 医療機関における高額医療機器の導入

病院やクリニックでは、MRIやCTスキャナーなどの高額な医療機器を必要とすることが多いです。
「ファイナンスリース」を利用することで、医療機関は最新の診断機器を導入し、診療の質を向上させることができます。

  • 病院が最新のMRI装置をリースし、診断能力を強化する。
  • クリニックが超音波診断装置をリースし、患者へのサービスを向上させる。
  1. 建設業における重機の導入

建設業では、ブルドーザーやクレーンなどの重機を短期間で使用することが多いため、「ファイナンスリース」が適しています。
これにより、プロジェクトのコスト管理が容易になります。

  • 建設会社が大型クレーンをリースし、大規模プロジェクトを効率的に進める。
  • 土木工事会社が掘削機をリースし、期間限定のプロジェクトに対応する。 
  1. IT業界における最新技術の導入

IT企業は、急速に進化する技術に対応するため、最新のサーバーやネットワーク機器を必要とします。
「ファイナンスリース」を利用することで、企業は迅速に最新技術を導入し、競争力を維持できます。

  • ソフトウェア開発会社が最新のデータセンター設備をリースし、サービスの信頼性を向上させる。
  • インターネットサービスプロバイダーがネットワーク機器をリースし、高速インターネットサービスを提供する。 

ファイナンスリースの仕訳例

「ファイナンスリース」の仕訳は、実際のリース契約や「利子込み法/利子抜き法」※等の処理の仕方に応じたものとなりますが、ここでは一例として仕訳例を記載します。

※利子込み法/利子抜き法

リース料の支払いを処理する方法には「利子込み法」と「利子抜き法」があります。
これらの方法は、リース料に含まれる元本部分と利息部分の計算方法が異なる点で区別されます。

  • 利子込み法:リース料全体をひとまとめにして処理する方法です。リース料の支払時に、その全額を支出として記録し、その中で利息部分と元本部分を分けて会計処理します。
  • 利子抜き法:リース料を支払う前に利息部分と元本部分を事前に計算し、それぞれを別々に処理する方法です。これにより、支払い時点で利息と元本が明確に区分されます。
  • リース開始時の会計処理

ファイナンスリース契約が成立した時点で、借手はリース資産を自己の資産として認識します。
これは、資産の公正価値またはリース支払額の現在価値のいずれか低い方で計上します。また、リース支払義務を負債として計上します。

仕訳例①:リース資産、リース債務の認識

リース期間3年で備品のファイナンスリース取引を開始した。
この備品の見積現金購入価額は3,000円で、リース料は1年で1,300円となる。なお、利子抜き法で処理する。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
リース資産 3,000円 リース債務 3,000円
  • リース期間中の会計処理

リース期間中は、リース支払の仕訳やリース資産の減価償却費の費用を計上します。

仕訳例②:リース支払額の計上

上記①で契約したリース物品について、1年分の支払いを実施した。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
リース債務 1,000円 現金 1,300円
利息費用 300円

 仕訳例③:減価償却費の計上

上記①で契約したリース物品について、1年分の減価償却費用を計上する。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
減価償却費 1,000円 リース資産減価償却累計額 1,000円

上記の仕訳例は一般的なものであり、実際の取引内容や会社の方針によって異なる場合があります。
したがって、会計担当者や経理部門の指示に従って正確な仕訳を行うことが重要です。

まとめ

「ファイナンスリース」は、企業が必要な資産を迅速かつ効率的に導入するための有力な手段です。
リース資産とリース債務をバランスシートに計上することで、財務状況を正確に反映し、透明性を高めることができます。
これにより、企業は経営判断の精度を向上させ、投資家や債権者との信頼関係を強化することができます。

また、「ファイナンスリース」を活用することで、資金繰りの改善やキャッシュフローの安定化を図ることができ、経済的リスクを軽減することが可能です。
会計処理の概要をしっかりと理解し、適切なリース契約を選択することで、企業は競争力を維持しつつ、持続可能な成長を実現することができます。

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