営業には、案件消滅や失注がつきものとはいえ、案件が受注できない結果を目の当たりにすると気が滅入るものです。しかし、一時的な失注は、必ずしも将来受注できないことを意味しません。営業部門やマーケティング部門の努力と工夫しだいで、将来の受注につなげることも可能です。
良い結果につなげるためにはMA(マーケティングオートメーション)の有効活用や、SFA(営業管理システム)との連携が欠かせません。本記事では受注に繋がらなかった案件に対し、巻き返すために必要な工夫や、MAとSFAとの連携ポイントを解説していきます。
商談に臨んだのに失注したからといって、敗北とは限らない
冒頭で解説したとおり、失注は商談の敗北を必ずしも意味しません。その理由を3つ取り上げ、順に解説していきます。
理由1:見込み客の担当者は必要と感じているが、予算がつかない
見込み客の担当者にプレゼンしたところ大変興味を持ってくれたものの、失注してしまったということはよくある話です。その大きな理由の1つに、「ぜひ導入したいが、予算がつかない」というものがあげられます。
法人向けサービスは、多額の費用がかかる場合も多いもの。いくら便利で業務効率化に役立つとわかっていても、導入には経営陣の承認が求められます。承認されるかどうかは現場における必要性だけでなく、業績改善への効果や経営状況にも左右されますから、単に「現場が求めている」ということだけをもって成約に結びつくとは限りません。
このため予算がつかなければ、担当者がどれだけ意欲を示していても成約には至りません。もっとも「他社の製品やサービスが安価なので、そちらを選択した」という結果ならともかく、単に導入を見送る結果であれば近い将来に受注できる可能性はあります。失注という結果にがっかりせず理由を分析し、今後受注できる可能性があるかどうか検討することが重要です。
理由2:そもそも製品やサービスを必要としている段階に達していない
2点目の理由として、顧客がそもそも製品やサービスを求めていないのに見込み客として営業を行ったことがあげられます。展示会やWebなどで貴社の製品やサービスに興味を持った方は、思いの外、多いのではないでしょうか。なかには興味津々という方もいるかもしれませんが、その理由は「将来の為に、中長期のスパンで考えて」という場合もあるかもしれません。
たとえば製品の生産においていずれは機械化を考えているものの、現時点では生産量が少なく、生産も管理も手作業で十分間に合うといったケースが考えられます。このような見込み客に売り込みをかけても、今すぐ必要ではないため成約につながりません。
このような場合は受注を急がず、貴社の製品やサービスをより知ってもらい、興味を持ち続けてもらう工夫が求められます。事業が拡大した際に真っ先に声をかけてもらえる関係に育てていくことが、ベストの施策と言えるでしょう。
理由3:導入する条件が整っていない
受注につながらなかった際の理由はさまざまです。もちろん「他社と契約する」ことは主な理由ですが、以下のケースも少なくありません。
- 複数年契約やリース契約の期間がまだ残っているので、時期を待って検討したい
- とりあえず今の製品を使い続け、いよいよ交換が必要となったら契約する
- 自社が求める機能が搭載されるまで、導入を待つ
このようなケースも、「導入する条件が整わないから発注しない」ことに過ぎません。数年後に条件が整えば改めて検討され、選ばれる可能性も多いにあります。成約を勝ち取るためにも、あきらめない姿勢が重要です。
失注した案件は一律に捨てず、マーケティングを継続することがお勧め
企業の営業成績を上げるためには、失注後の案件をもう一度商談化するプロセス(リードリサイクル)が重要です。まずは案件を捨てず、失注の原因を分析しましょう。その上で、将来見込みがありそうなリード(見込み客)にはマーケティングを継続することがお勧めです。ケース毎に解説していきます。
1.時期が来れば受注できる場合も。見込み客とのコネクションを切らないことが重要
失注の主な理由に、「見込み客の条件が整っていなかったこと」があげられます。もし本当に必要な製品やサービスならば、条件が整った段階で以下のアクションが取られることでしょう。
- 複数年契約やリース契約ならば、契約の満了にあわせて導入開始できるよう準備を始め、商談に臨む
- 予算がついたら、その時点で商談を開始する
このため、リードとの接点を持ち続けることが商談に臨む際の有利な材料となります。定期的に情報を送り、関心を持ち続けられるようサポートするとよいでしょう。このような取り組みにより、競合に対し有利な立場に立てます。
2.製品やサービスの理解が進んでいない場合もある
多くの人は、よくわからない製品やサービスに対して手を出そうとしません。特に法人向けのサービスは、経営陣への説明が必須となるものです。担当者がよく理解していないならば、稟議を上げることも難しくなります。
このような場合はマーケティング部門に戻し、メールなどを用いて詳しい情報を配信し購入意欲を高める「リードナーチャリング」をしっかり行うことが重要です。今まで知らなかった便利な機能に見込み客が自ら気づければ、購入意欲も高まることでしょう。ときには見込み客が自ら「ぜひ契約を前向きに検討したい」と言い出すまで、じっくり待つことも重要です。
3.いったん他社と契約しても、数年後に乗り換える場合も少なくない
有力な競合他社が存在する業界は多いものです。このような業界ではいったん他社と契約した場合でも、数年経つと以下の理由により他社への乗り換えを検討する場合も少なくありません。
- 契約したものの、機能やサービス、サポート内容が悪い
- 料金がアップした。または安価なサービスが登場した。そのため乗り換えた上でコストダウンを図りたい
- より良いサービスや、より自社のニーズに合致したサービスが登場した
- 契約先のサービスが廃止になった
上記のいずれかに該当する場合は、改めて貴社の製品やサービスが検討される可能性があります。このとき見込み客が貴社の製品やサービスを十分に理解していると、導入の検討がされやすくなります。
4.情報提供を続けリードを育成することで、受注の可能性が見えてくる
案件を失注したからといって、貴社の製品が二度と選ばれないわけではありません。年月を経て製品への理解が進むことで、受注につながることも十分に可能です。
このため、失注の連絡を受けたからといって、諦めてコンタクトを打ち切ることはもったいないものです。まずは継続した情報提供が必要か、確認してみましょう。もし見込み客の承諾を頂けるようならば、情報提供を続け自社製品やサービスについて知ってもらうことができます。このことにより将来受注できる可能性が見えてきますから、一度失注したからといって諦めてはいけません。
MAとSFAの組み合わせで、受注につなげる3つのプロセス
失注案件を受注につなげるためには、MAとSFAの組み合わせが有効です。ここでは受注につなげる3つのプロセスを取り上げ、それぞれのポイントを解説していきます。
① MAとSFAを連携し、相互の記録内容から課題を見つける
失注した案件を受注につなげる第一歩は、リードリサイクルです。再びホットリード(購入意欲の高い見込み客)として営業に引き渡すためには、失注の原因を把握しなければなりません。この情報は営業部門に求めれば、ある程度は得られるでしょう。しかし営業部門とマーケティング部門の視点は異なる場合もあり、必ずしもマーケティング部門が欲しい情報が得られるとは限りません。
そこでMAとSFAを連携し、相互に状況を確認し合える仕組みが求められます。たとえば営業段階での見込み客の反応や失注した理由をマーケティング担当者の視点でチェックすることで、再度営業に引き渡す前に適切な施策を打ち、受注につなげることが可能です。
② MAで解決できる課題を見つけ、より良いリードナーチャリングを行う
失注した案件がマーケティング部門に戻されたら、行うべき課題をピックアップしましょう。その上でMAの活用により解決できる課題を見つけ、リードナーチャリングを行うことが重要です。
たとえば失注の理由が「自社製品やサービスの理解不足」にあるなら、見込み客に深く知ってもらうための工夫が必要です。もし「機能が足りないこと」が理由ならば、見込み客が求める機能が搭載された時点でいち早く情報提供できる工夫が求められることでしょう。
一方で「予算がつかないこと」が理由であれば新たな施策は必要ないように思われがちですが、そうでもありません。見込み客が自社に対する興味・関心を失わないよう、魅力的な情報提供を続けましょう。いざ予算がついたときに、この活動が受注に向けた大きな原動力となります。
③ ベストなタイミングで営業担当に引き渡す
MAの役割には、ホットリードを抽出する「リードクオリフィケーション」もあげられます。代表的な機能として、見込み客の行動を点数化する「スコアリング機能」があげられます。
リードを絞り込む際には、この機能を活用するとよいでしょう。見込み客の興味・関心が高い段階で商談に持ち込めるため、成約しやすくなることがメリットです。ベストなタイミングで営業に引き渡せる点でも、有効な仕組みです。
もし高い興味・関心を示していてもスコアリングの結果が高くない場合は、本当に商談化が可能か精査する必要があります。状況によっては、リードナーチャリングを続ける決断も必要となるでしょう。
失注しても縁が切れるわけではない。MAとSFAの連携で再挑戦し、受注につなげよう
ここまで解説したとおり、失注したからといってもう受注できないわけではありません。まずは失注した理由を分析することが重要です。もし再チャレンジできる可能性があるならば、原因に応じた対策を取ることで受注につなげることが可能です。
この点で、MAとSFAの連携は重要です。両システムを具備したシステムを活用することも、よい選択といえるでしょう。
連携によりマーケティング・営業それぞれの段階における見込み客の考えを知ることができ、効果的な施策につなげることが可能となるでしょう。
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